2026年5月、経済産業省・厚生労働省・文部科学省から「2026年版ものづくり白書」が公表されました。
今回の白書を見ると、日本の製造業では設備投資の拡大、省力化・省人化、AI・デジタル技術の活用がこれまで以上に重要になっていることが分かります。
工作機械を単独で分析した資料ではありませんが、製造業の設備投資や加工・稼働データ、フィジカルAIなど、工作機械業界とも非常に関係の深いテーマが数多く取り上げられています。
今後の製造業では、「設備を保有する」だけではなく、設備を更新し、生産性を高め、データを活用することが企業競争力を左右する重要な要素になっていくと考えられます。
今回は「2026年版ものづくり白書」をもとに、工作機械市場に関係するポイントを紹介します。
製造業の設備投資は2021年以降増加傾向
日本企業の設備投資について2026年版ものづくり白書によると、日本の製造業では2021年以降、設備投資が増加しています。古くなった設備を補うだけでなく、それ以上に新しい設備へ投資する動きも強まっています。これは、製造現場で設備更新や生産性向上に向けた投資が進んでいることを示しています。
製造業にとって設備投資は、
- 生産能力の向上
- 老朽化した設備の更新
- 省人化・省力化
- 生産性向上
- 新製品への対応
などを進めるための重要な手段です。
工作機械についても、工場の設備更新が進めば、新しい設備を導入する一方で、これまで使用していた機械の入替えが発生します。
そのため、設備投資の増加は新品市場だけでなく、中古工作機械市場にも関係する動きといえるでしょう。
日本は「設備投資が十分」とはいえない
設備投資額が増加している一方で、白書では別の課題も指摘されています。それは日本企業の資本装備率の低さです。日本の資本装備率は他の主要国と比較して低い水準にあり、とくに収益性の低い企業ではAI・デジタル技術など無形固定資産への投資も少ない傾向があります。
つまり、「設備投資は増えているものの、日本の製造業にはまだ設備投資・設備更新を進める余地がある」と見ることができます。
設備の老朽化を放置すると、生産効率だけでなく、保守費用や故障リスクなどが増加する可能性もあります。今後、人手不足がさらに進むことを考えれば、古い設備を使い続けるだけではなく、必要に応じて設備を見直していくことが重要になってきます。
収益力の高い企業ほど「省力化・省人化」に積極的
収益力の高い企業ほど、省力化・省人化投資、増産投資、システム投資などに積極的であることが示されています。
また、設備投資に積極的で労働生産性の高い企業ほど、賃上げ率も高い傾向にあります。現在、多くの製造現場では人材不足が大きな経営課題となっています。
そのため今後は、人を増やして生産能力を高めるという考え方だけでなく、設備や自動化によって少ない人数でも生産できる環境をつくることが一段と重要になるでしょう。
工作機械についても、単なる設備更新ではなく、省人化・自動化まで含めた設備投資が増えていく可能性があります。
工作機械は「加工する設備」から「データを生む設備」へ
今回の白書で特に興味深いのが、製造現場のデータ活用についてです。
経済産業省では、製造現場のデータベースを整備し、AIモデルを実装した製造プラットフォームの開発を支援する「製造AX拠点」の整備を進めています。対象となるデータとして、白書では明確に「加工・稼働データ」が挙げられています。
工作機械との関係を考えると非常に重要なポイントです。これまで工作機械は、「削る」「穴を開ける」「研削する」「成形する」といった加工を行うことが主な役割でした。しかし今後は、設備の稼働状況や加工条件などをデータとして取得し、それを生産改善に活用することも重要になってきます。
白書では、「製造現場のデータをデータ基盤として整備し、AIを掛け合わせた社会実装とデータ蓄積が今後の勝ち筋」としています。
工作機械そのものの性能に加えて、設備から得られるデータをどのように活用するかも競争力につながる時代になりつつあります。
「フィジカルAI」も製造業の重要テーマに
さらに白書では、近年注目されているフィジカルAIについても触れています。
政府は今後、日本の製造現場のデータを収集・蓄積し、フィジカルAIの確立などを進めることで、製造業全体の競争力強化を図る方針を示しています。
フィジカルAIとは、AIがデジタル空間の中だけではなく、ロボットや機械設備など現実世界の機器と連携して動作する技術です。工作機械の分野でも将来的には、
工作機械
↓
センサー・加工データ
↓
AIによる分析
↓
ロボット・自動搬送設備との連携
↓
生産工程全体の最適化
といった仕組みがさらに広がっていく可能性があります。
工作機械単体の性能だけではなく、工場全体を一つのシステムとして捉える考え方が重要になってきています。
一方でAI・DXを使える人材が不足
ただし、AIやデジタル技術を導入すればすべてが解決するわけではありません。
白書ではAI・デジタル技術を活用する際の課題として、知識・ノウハウ不足や人材確保の難しさを指摘しています。
また、競争力強化に必要な製造プロセス全体の最適化についても十分に進んでおらず、企業間のデータ連携も停滞しているとしています。
つまり、最新設備を導入することと最新設備を活用できることは別の問題です。工作機械についても、設備そのものだけでなく、それを扱うオペレーターや技術者、保全担当者などの育成が引き続き重要になります。
工作機械の技能継承も重要な課題
製造業では、熟練技術者が持っている加工技術やノウハウを次世代へどのように引き継ぐかも大きな課題です。
白書では、精密切削加工を行う企業が、若手社員への技術継承を目的として社内技術大学を設けた事例も紹介されています。
ベテラン社員が自身の経験をもとに製造工程全体のカリキュラムを作成し、OJTだけでは学びにくい製造工程全体の流れや技術を若手社員へ伝えています。
工作機械の加工では、機械の操作方法だけでなく、加工条件の設定や段取り、工具選定、材料ごとの対応など、長年の経験によって蓄積されたノウハウも少なくありません。
AIや自動化が進んだとしても、こうした技能をどのようにデータ化し、次世代へ残していくかは重要なテーマになっていくでしょう。
設備更新では「今ある工作機械」の整理も重要
設備投資を進める際には、新しい設備を購入することだけを考えるのではなく、現在使用している設備をどのように整理するかも重要です。
新しい工作機械を導入すると、「既存機械を移設する」「別工場へ移す」「中古機械として売却する」「使用できない設備を処分する」といった対応が必要になります。
特に工作機械は大型設備も多いため、設備更新が決まってから売却方法を検討するのではなく、新設備の搬入スケジュールと合わせて早めに既存設備の整理を進めることがポイントです。
まだ使用可能な工作機械であれば、中古市場で再流通できる可能性もあります。
国内で需要が少なくなった設備でも、海外市場では需要があるケースもあります。
株式会社ダイナでは中古工作機械の買取に対応
株式会社ダイナでは、全国から中古工作機械の買取・売却相談を承っています。
工場の設備更新や生産ライン変更、工場移転・閉鎖などによって工作機械の整理をご検討されている場合もご相談ください。
設備の状態や年式、市場での需要などを確認したうえで査定いたします。
また、「新しい設備を導入するので既存設備を売却したい」「長年使用していない工作機械がある」「国内では需要がないと思っている」「複数台まとめて整理したい」といったケースについてもご相談いただけます。
まとめ|設備投資とAI活用が工作機械市場を変える
2026年版ものづくり白書から見えてくるのは、日本の製造業が今後、設備投資・省人化・データ活用・AIを組み合わせながら、生産性を高めていく必要があるということです。
実際に製造業の設備投資額は2021年以降増加しており、一方で日本の資本装備率は主要国と比較して低い水準にあります。今後さらに人材不足が進めば、設備更新や自動化、省力化への投資は製造業にとって一層重要になるでしょう。
そして設備更新が進めば、これまで工場で使用されてきた工作機械を「廃棄する」のではなく「次のユーザーへつなぐ」中古工作機械市場の役割も重要になります。
株式会社ダイナでは、国内で買取した中古工作機械を国内外の市場へ流通させています。
設備更新や工場整理などで工作機械の売却をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。


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