工作機械メーカーのヤマザキマザック株式会社が、新たな研究開発拠点「Mazak Innovation Hub(マザック イノベーション ハブ)」を愛知県大口町に開設することを発表しました。
開設予定は2027年8月。研究・設計・試作といった機能を集約し、人材や技術をつなぐことで、次世代技術の研究と革新的な製品開発を加速させることを目的としています。
今回は、ヤマザキマザックが発表した新しい研究開発拠点について、その特徴と工作機械業界への影響を見ていきます。
参考:研究開発拠点「Mazak Innovation Hub」の開設について | ヤマザキマザック
「Mazak Innovation Hub」とは
「Mazak Innovation Hub」は、ヤマザキマザックの本社がある愛知県丹羽郡大口町に開設される新しい研究開発拠点です。
最大の特徴は、これまでの研究施設という枠にとどまらず、
- 研究
- 設計
- 試作
- 評価
- 社外企業との共同開発
といった製品開発に関わる機能や人材をつなぐ「Hub」として設計されていることです。
ヤマザキマザックは公式発表の中で、同施設について「次世代技術の研究と革新的な製品開発を効率的に推進する拠点」と位置付けています。
設計から試作・評価までをシームレスにつなぐ
今回の研究開発拠点で特に注目したいのが、設計部門と実際に工作機械を試作・評価する現場との距離を近づけていることです。
施設内では、工作機械の試作や評価を行うエリアにオフィスを隣接して配置。
設計したものを試作し、実際に評価して、その結果を再び設計へ反映する――という開発サイクルをスムーズに回せる環境が整えられます。
工作機械の場合、机上で設計を完結させるだけではありません。
加工精度や操作性、生産性、加工時間、熱変位、自動化設備との連携など、実機で確認すべき項目が数多くあります。
設計と試作・評価を近接させることは、こうした製品開発のスピードを高めるうえでも重要になりそうです。
部門を越えた「人の交流」も重視
もう一つ特徴的なのが、設備だけでなく働く人同士のコミュニケーションを重視していることです。
Mazak Innovation Hubでは、自然な対話が生まれるミーティングエリアを設けるほか、部門の枠を越えた交流や協働を促すため、開放的なオフィスレイアウトが採用されます。
ヤマザキマザックが公開した完成イメージでも、一般的な研究施設というより、オープンスペースを多く取り入れた環境になっていることが確認できます。
単に最新設備を導入するだけではなく、異なる技術や知識を持つ人が交流することで新しいアイデアを生み出すことが、新拠点の大きな狙いと考えられます。
社外企業との「オープンイノベーション」も推進
Mazak Innovation Hubでは、社内だけで研究開発を完結させない点にも注目です。
施設内には、社外パートナーとの技術交流や共同開発を行う専用エリアが設置されます。
つまり、工作機械メーカーだけで技術開発を行うのではなく、さまざまな技術を持つ企業や研究者などと連携し、新しい技術・製品を生み出そうという取り組みです。
近年の工作機械は機械本体だけではなく、CNC、ソフトウェア、AI、ロボット、自動化、センシング、デジタルツインなど、多くの技術が組み合わされるようになっています。
こうした状況を考えると、異なる分野の技術をつなぐ研究開発拠点の役割は、今後さらに重要になっていきそうです。
マザックではAI・デジタルツインの活用も進む
今回の新拠点の開設を考えるうえで押さえておきたいのが、ヤマザキマザックがすでに進めている工作機械のデジタル化です。
同社の最新CNC「MAZATROL SMOOTH Ai」では、AIやデジタルツインなどのデジタル技術を活用。
プログラミングや段取り時間の削減、サイクルタイムの短縮、加工精度の安定化、自動化対応などによる生産性向上を進めています。
また、デジタルツインソフトウェア「MAZATROL DX」と連携することで、工場にある工作機械をオフィスのパソコン上に再現し、加工段取りをデジタル化する仕組みも展開しています。
ヤマザキマザックは公式の代表メッセージでも、IoTやAIなどの先進技術を活用した製品・サービスの開発を加速させ、生産現場の自動化・スマート化を推進する方針を示しています。
その意味でも、Mazak Innovation Hubは今後のマザックの技術開発を支える重要な拠点になると考えられます。
なぜ愛知県大口町なのか
新施設が建設される愛知県大口町には、ヤマザキマザックの本社・大口製作所があります。
大口製作所では、横形マシニングセンタやマルチタスキングマシン、FMSなどが生産されています。
また、ヤマザキマザックは日本だけでなく、米国、英国、シンガポール、中国などの生産拠点にもR&D機能を設け、各地域の顧客ニーズを製品開発につなげる体制を構築しています。
こうした既存の開発・生産体制にMazak Innovation Hubが加わることで、大口地区がこれまで以上に重要な研究開発拠点になることが予想されます。
100年以上にわたり工作機械を開発
ヤマザキマザックは1919年創業の工作機械メーカーです。
1927年に旋盤やフライス盤など工作機械の製造を開始し、その後、NC旋盤、マシニングセンタ、複合加工機、レーザ加工機などへ製品分野を広げてきました。
現在は複合加工機、5軸加工機、CNC旋盤、立形・横形マシニングセンタ、レーザ加工機、自動化システム、CAD/CAM、生産支援ソフトウェアなど幅広い製品・システムを展開しています。
100年以上にわたって工作機械を開発してきた同社が、新たな研究開発拠点に大規模な機能集約を進めることは、今後の工作機械技術の方向性を見るうえでも注目したい動きです。
工作機械は「機械単体」から総合技術へ
今回の発表から見えてくるのは、工作機械の競争領域が機械本体だけではなくなっていることです。
高精度・高速加工はもちろん、AI、デジタルツイン、自動化、ソフトウェア、操作性、工程集約など、さまざまな技術を組み合わせて生産性を高めることが求められています。
だからこそ、研究・設計・試作・評価、さらに社外の技術までを一つにつなぐMazak Innovation Hubのような施設が必要になっているとも考えられます。
これはマザックだけの動きとしてではなく、これからの工作機械産業がどこへ向かうのかを示す一つの事例として注目したいところです。
まとめ|2027年以降の新製品・技術にも注目
ヤマザキマザックが2027年8月に開設予定の「Mazak Innovation Hub」は、研究・設計・試作を集約するだけではありません。
人材や技術、さらには社外企業までをつなぎ、次世代の工作機械やモノづくり技術を生み出すための研究開発拠点です。
AIやデジタルツイン、自動化などによって工作機械が大きく進化するなか、Mazak Innovation Hubから今後どのような新製品・技術が生まれるのか注目されます。
株式会社ダイナでも、工作機械メーカーの新製品や技術開発、市場動向など、モノづくりに関する最新情報を引き続き紹介していきます。


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