工作機械受注|11月の数字が示す“世界製造業の変化”とは【速報値の考察】

こんにちは、株式会社ダイナの広報担当・松本です。

昨日は、2025年11月分の工作機械受注統計速報について、数値を中心にご紹介しました。

本日は、その数字の背景にある 「世界の投資マインド」や「製造業の流れ」 に踏み込み、11月の動向をより深く分析していきます。

目次

11月は2か月連続の2桁増——外需主導で回復が鮮明に

速報値によると、2025年11月の受注総額は 1,362億9,100万円(前年同月比+14.2%)。10月に続いて 2か月連続の2桁増 となりました。

前月比は95.0%と小幅な調整でしたが、これは10月が強すぎた反動で、「基調としての伸び」はむしろ強まっている印象です。

外需は+23.2%|アジアの設備投資回復が本格化

11月の外需は 1,047億5,400万円(前年同月比+23.2%)。10月に続き、強力な成長が続いています。

外需拡大の背景

  • インド・ASEANの製造業投資が底堅い
  • 中国以外の新興国で需要が拡大
  • 円安による日本製機械の価格競争力上昇
  • EV・精密部品・航空機関連の投資が再加速

ここ数年の外需は中国依存が強いと言われてきましたが、直近では アジア広域の分散した需要が日本製機械の受注を底支えする構図 に変わってきています。

これは非常に良い傾向で、「単一市場に左右されない強さ」を意味します。

内需は“慎重姿勢”が継続|人手不足が投資判断に影響

一方で、内需は 315億3,700万円(前年同月比91.9%) と、前年割れ。前月比も88.4%と弱含みです。これは景気の悪化というよりも、国内企業の設備投資が「一巡した」ことによる調整局面 と見る方が適切です。

ここ数年、国内では自動化・省人化投資が急速に進み、自動車・金属加工を中心に多くの企業が主要設備を更新してきました。その反動で、2025年後半は “様子見” に入っている企業が増えています。

さらに、電気代・人件費・資材価格の上昇により、中小企業ほど 「投資の優先順位を慎重に見直している状態」 が続いています。決して需要が消えたわけではなく、更新タイミングの調整 が主な要因と言えるでしょう。

また、国内では半導体・EV関連など一部分野で大型投資が一服しており、この動きも内需の数字を押し下げています。

ただし基調としては底堅く、2025年通年の内需は 前年並み(99.7%) を維持しており、市場が縮小しているわけではありません。

内需が伸びにくい構造的な要因

  • 中小企業の投資判断が慎重
  • 半導体・電気系の投資がピークアウト
  • 既存案件が詰まり“人手不足で新規設備に踏み切れない”ラインも多い

「買いたくても、工場の稼働が逼迫していて設備導入の時間が取れない」という現場の声は2024〜2025年で増えています。しかし年間累計では ほぼ前年並み(99.7%) を維持しているため、悲観する内容ではありません。

世界製造業PMIは回復軌道へ|11月の日本受注と整合性が高い

11月の数字を裏付けるように、世界の製造業PMIは改善傾向が続いています。

11月の各国PMI(簡易まとめ)

  • 米国:52台(好調)
  • 日本:48台(横ばいだが底堅い)
  • 中国:50割れだが、対策で下支え
  • 欧州:49台(弱いが底入れの気配)
  • 台湾:48台(横ばい)

全体として、「悪くはない」→「改善しつつある」というトーンに変化しています。とくに米国のAIインフラ投資、インド・ASEANの製造業拡大が、工作機械受注の底堅さにつながっていると考えられます。

“フィジカルAI”が次の投資テーマに——工作機械需要の追い風へ

現在、世界では フィジカルAI(AI×ロボット×設備) が次の投資ブームになると見られています。フィジカルAIは以下の機能・役割を担います。

  • 工場の機械・産業ロボット・物流設備の自律管理
  • 自動化ラインの最適化や省人化

これらに関する設備投資が世界的に増える可能性があります。AI投資 → 自動化設備 → ロボット・工作機械の更新需要という構図が鮮明になってきており、日本の工作機械メーカーや中古機械市場にとって追い風になりうるテーマです。11月の外需+23.2%も、この潮流と無関係ではないと考えられます。

総括|11月は“外需が牽引する回復局面”を裏付ける月に

2025年11月の速報値を分析すると、次の結論に整理できます。

  • 外需+23.2%が全体を引き上げた
  • 内需は慎重だが底堅い(構造的な要因が大きい)
  • アジアの設備投資回復が続く
  • 世界製造業PMIの改善と整合性あり
  • フィジカルAIが今後の投資テーマに

数字上の回復だけでなく、「なぜこの数字になったのか」を裏付ける世界の動きが出始めています。

今後の12月速報値と2026年の設備投資計画にも、引き続き注目していきたいところです。当ブログでも、速報値・確報値・周辺分析を継続して発信していきます。ぜひ引き続きご覧ください。

参考:工作機械受注が教えてくれる日本株・世界経済(25 年11 月)|第一生命研究所

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