【製造業DX事例】山本金属製作所に学ぶ「匠の技×データ」で進化する次世代工場

日本の製造業において、熟練技能者の不足や生産性の向上は喫緊の課題です。その中で、「DXセレクション2022」のグランプリに輝いた株式会社山本金属製作所(大阪市)の取り組みは、多くの中小企業にとって進むべき道標となっています。

今回は、同社がどのようにして「機械加工」という伝統的なプロセスをデジタルで変革したのか、その舞台裏を解説します。

参考:中堅・中小企業等における DX 取組事例集|経済産業省

目次

老舗の加工メーカーがDXを必要とした理由

山本金属製作所がDXへ踏み出した背景と動機は以下の通りです。

1. 始まりは「リーマンショック」の倒産危機

2008年のリーマンショックで受注が半減。当時の経営陣は「従来の請け負うだけの商売では生き残れない」という強烈な危機感を抱きました。これが、「受注を待つ会社」から「自ら解決策を提案する会社」へ変わる大きな転換点となりました。

2. 「職人の勘」をセンサーで数値化

機械加工の現場では、刃先で何が起きているか職人の「勘」に頼るしかありませんでした。同社はここにセンサーを導入し、振動や熱をデータとして「見える化」。これにより、誰でも高品質な加工ができる仕組みや、機械が自律的に動く「進化する工場(Learning Factory)」を構築しました。

3. 「モノ売り」から「解決策売り」へ

自社で培った「データを活用して加工を最適化する技術」を、同じ悩みを持つ他社向けに「LAS(加工最適化支援サービス)」として提供を開始しました。 単に部品を削るだけでなく、「どうすれば効率よく削れるか」というノウハウを売るビジネスモデルへの変革に成功したのです。

「機械の刃先」からデータを読み取る革新

多くの工場でDXといえば「稼働管理」から始まりますが、山本金属製作所の取り組みはさらに深く、「加工の核心」に迫るものでした。

同社は工作機械の刃先にセンサーを取り付け、加工中の振動や温度、負荷などをリアルタイムで計測。目に見えない加工現場の状態を数値化することに成功しました。

  • デジタルツインの活用: 3Dモデル上のシミュレーションと、実機から得られるリアルタイムデータを同期。
  • 無人化への挑戦: データのフィードバックにより、機械が自律的に判断・制御するプロセスを構築し、高度な無人化加工を目指しています。

LAS(機械加工最適化支援サービス)

山本金属製作所のDXで最も注目すべきは、自社の効率化にとどまらず、その知見を「外販サービス」へと昇華させた点です。

同社が提供する「LAS(機械加工最適化支援サービス)」は、単なる計測機器の販売ではありません。

「なぜこの工具はすぐ折れるのか?」「どうすれば精度が上がるのか?」という顧客の悩みを、計測データとAI、そして自社の熟練工の知見を組み合わせて解決するコンサルティング型のビジネスです。

これにより、同社は「加工品を作る会社」から「機械加工の課題を解決するソリューション企業」へと大きな変革を遂げました。

「Learning Factory(進化し続ける工場)」というビジョン

同社が掲げるコンセプトに「Learning Factory」があります。これは、一度作って終わりのシステムではなく、日々の稼働データが蓄積され、それをもとにAIやアルゴリズムが学習し、工場の精度が自動的に向上し続ける仕組みです。

まさに、「匠の経験」をデジタル化し、組織全体の知財として蓄積・進化させているのです。

中小企業が山本金属製作所から学べること

同社の事例から、私たちが学べるポイントは3つあります。

  1. 「現場の核心」にデジタルを当てる: 事務作業の効率化だけでなく、自社の強みである「加工プロセス」そのものをデジタル化する。
  2. 匠の技を否定しない: デジタルは職人を排除するものではなく、職人の感覚を「見える化」し、継承しやすくするための武器である。
  3. 自社の強みをサービス化する: 自社のために開発した仕組みが、同じ悩みを持つ他社の救い(新ビジネス)になる可能性がある。

まとめ:DXは「価値創造」の手段

山本金属製作所のDXは、単なる「コスト削減」や「効率化」を目的としていません。機械加工というプロセスに新たな価値を与え、顧客に届けるための手段としてデジタルを使い倒しています。

【企業概要:株式会社山本金属製作所】

  • 所在地: 大阪府大阪市
  • 事業内容: 精密機械部品の製造、機械加工最適化支援サービス(LAS)の展開
  • 受賞歴: 経済産業省「DXセレクション2022」グランプリ

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