工作機械受注速報をめぐる考察|“回復基調+構造変化”に注目

こんにちは、株式会社ダイナ 広報担当・松本です。
今回は、2025年9月分の工作機械受注速報ををもとに、統計値の裏側を読み解く考察をお届けします。

参考:統計情報 | 一般社団法人 日本工作機械工業会
7〜9月の工作機械受注7%増 航空向け伸び、関税影響は限定的|日本経済新聞
工作機械受注が教えてくれる日本株・世界経済(25 年8月)|株式会社第一生命経済研究所

目次

最新データのおさらいと追加報道

区分9月受注額前年同月比前月比累計受注(1〜9月)累計比
総額約1,377億8,000万円+9.9%+14.7%約1兆1,638億4,900万円+5.8%
内需約427億8,600万円+3.0%+34.1%約3,324億1,800万円–0.4%前後(前年同期比微減)
外需約949億9,400万円+13.3%+7.6%約8,314億3,100万円+8.5%

(備考:公表値と報道ベースの累計比率に若干の差異が見られますが、大局感として外需主導での成長傾向は一致しています)

日経系報道によれば、7~9月期の受注は前年同期比で7%増という見方も紹介されており、航空機向けの受注伸びがけん引要因の一つと指摘されています。

また、記事では米国の輸入関税リスクにも言及されており、工作機械も対米輸出において一定の警戒材料になりうるとの見方が示されています。

このような報道を加味することで、単なる「受注伸び」ではなく構造変化とリスク要因を意識した視座が必要と感じられます。

考察:注目すべき視点と論点

以下、統計+報道を組み合わせて、私見を交えて論点を整理しました。

1. 外需主導の伸びは想定どおりだが「新需要分野」の存在

外需の受注伸び率が内需を大きく上回る構図は、これまでの傾向どおりです。ただ、日経報道の「航空機向け受注の伸び」は興味深い指摘です。航空分野は以前からの需要ではありますが、グローバルな運航再開・航空機補修需要増などが追い風になっている可能性があります。

もし航空分野の需要が増えているなら、従来の産業機械分野とは異なる需要構造(高精度・高信頼性・軽量構造対応など)が問われ、国内メーカーにも技術適応力が求められるでしょう。

こうした「従来型製造業+成長セグメント(航空、宇宙、医療など)」の両輪受注への対応が、今後の勝ち筋になると考えられます。

2. 内需回復の“起点”は見えてきたが不安が残る

9月の内需は前月比で大幅な伸びを見せ、前年同月比でもプラス転化(+3.0%)しました。これだけを見ると、国内設備投資の回復力が確認できたように見えます。

ただ、累計では内需の前年同期比がほぼ横ばい〜微減水準(‐0.4%程度)という報道もあり、9月だけの“反発”的な動きという側面も否めません。
要するに、「内需はようやく底打ちしつつある可能性があるが、持続性はまだ不透明」というのが現時点での妥当な見方です。

国内市場を見渡すと、自動車や半導体関連、EV/再生エネ投資などが内需回復の中心軸になるとみられますが、製造業全体を押し上げるには、これらに加え設備の老朽更新・省人化ニーズの拡大も必要です。

3. 関税リスクと通商摩擦は“隠れた変数”

日経報道で指摘されたように、米国が製造機械分野への関税措置調査を検討中であるとの見方があります。
もし対米輸出に関税がかかるような事態になれば、日本の工作機械輸出メーカーにとっては収益性圧迫要因となり得ます。特に、高額な工作機械・付加価値の高い装置がターゲットになりやすいでしょう。

ただし、報道では「関税影響は限定的」との表現もあり、実際の政策化までにはハードルが高いという見方も示されています。
とはいえ、今後の政策動向、米中関係、通商協議の進展などは要チェックです。

4. 受注循環 ⇒ 設備投資 ⇒ 企業収益への波及

第一生命経済研究所レポートは、工作機械受注を“景気の先行指標”と位置付けており、受注回復局面入りの見方を示していました。
今回の9月プラス転化は、まさにそのシナリオを裏付ける一歩と言えます。

工作機械受注の拡大が実際の機械導入・稼働につながれば、製造業全体の生産性向上・収益改善を後押しする可能性があります。そして、それが株式市場やその他の設備投資へ波及するというシナリオは、以前の記事でも触れた通りです。

ただし、需給ギャップ、資材価格・物流コスト、為替変動、金融政策制約など、実需化のところで障壁となる要素も複数あります。特に為替変動(円安/円高)や金利水準が企業の投資意欲を左右する要因となります。

今後の注目ポイントとリスク管理

最後に、今後焦点になりそうな要素と、リスクを踏まえた視点を列挙しておきます。

注目ポイント内容リスク要因
10~12月の受注動向9月の回復を持続できるかが鍵。7〜9月期で見られた7%増ペースを維持できれば、自動車・航空・電子分野が柱季節要因、政策変動、資材納期不安定
セグメント別伸び具合航空・宇宙・医療など非従来機械分野の受注動向技術対応遅れ、輸出規制、認証・安全規格負担
対米輸出関税動向実際に関税が導入されるかどうか、論点整理が進むか貿易摩擦、報復措置、輸出先多様化の遅れ
内需の底堅さ電力・インフラ・自動化関連投資の持続性企業収益悪化・コスト上昇圧力、金融制約
設備導入と稼働実態受注から稼働開始・稼働率向上への移行工場立地、人手不足、資本支出制約
為替・金利・コスト転嫁円ドル変動、金利上昇傾向、部材価格上昇為替ヘッジコスト、返済負担、調達価格高騰

これらを踏まえつつ、私としては以下のような見通しを持っています。

  1. 2025年後半〜2026年前半にかけて、受注拡大トレンドは継続する可能性が高い。
  2. ただし、成長分野(航空、医療、次世代技術対応)と従来分野の二極化傾向が強まるだろう。
  3. 関税・通商政策リスクも織り込んだ企業戦略・輸出先分散策が重要になる。
  4. 内需起爆力を支えるためには、更新需要・自動化需要を引き出す政策支援や企業投資環境改善が鍵を握る。

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